蒸し暑い日が続く。
心配ない。灘区には山がある。
下界との温度差5°
まだクーラーがなかった昭和の初め、灘クミンは摩耶山の天然クーラーで涼をとった。
電鉄系の施設が多く「よそいきの避暑地」として開発が進んだ六甲山に比べ
摩耶山は天上寺を中心とした「地元の避暑地」としてにぎわった。
普段ならケーブル、ロープウェーを乗り継いで上がる摩耶山だが、
夏は是非ケーブル虹の駅で下車し、昭和の避暑地をたどっていただきたい。
まやビューラインの中間駅「虹の駅」から旧天上寺までの参道には今も昭和が残っている。
いわゆる「マヤ遺跡群」だ。
昭和初期はまだロープウェーもなく、ここが摩耶山上駅だった。
駅前にはかつて「摩耶一茶」という茶店があった。
「ここのうどんはおいしかった!」というクミンは私だけではあるまい。
摩耶ロープウェー虹の駅までの間には、ほかに5〜6軒の茶店や射的場がならんだ
天上寺門前街といった風情だった。
摩耶一茶跡
両側に草が生い茂った石段をのぼり、小さなほこら「高尾明神社」を過ぎ、
しばらく行くと「摩耶花壇」と呼ばれる廃屋が残っている。
サウナ風呂や入院施設のあった療養所だったそうだ。
摩耶の清々しい空気を吸いながら、患者たちは英気を養ったのだろうか。
摩耶花壇跡
このあたりは旧天上寺の塔頭跡の構造物が草の下で静かに横たわっている、
上野道への分岐点に地蔵の祠があるが、このあたりに「下のアメヤ」と呼ばれる茶店があった。
おはぎ、ぜんさい、きな粉餅、焼きとうきびなどの甘味などがあったが、なんといっても
ここの名物は「ネコのフン」だ。
芋飴の中に煎った大豆が入った姿が猫のソレに似ていることから名付けられた
伝統の「摩耶スイーツ」である。
下のアメヤでは他にもおはぎ、ぜんざい、きな粉餅、焼きとうきび、昆布菓子など
山歩きに適した甘味が供されていた。
下のアメヤ跡
参詣者に「ほうけんどう」と呼ばれていた宝筐印塔(ほうきょういんとう)を過ぎると、
つづれ折りの坂道になり、いよいよ山岳寺院の趣が深まる。
青谷道との分岐を右に行くと小さな踊り場のようなスペースがある。
「ヤメア」と書かれたコンクリート製の構造物が残っている。
これは右からアメヤと読む。
つまり、ここにアメヤ(茶店)があったことを示している昭和の遺構だ。
ここには「上のアメヤ」と呼ばれた茶店があった。
「ししおどしもあったなあ」と天上寺の伊藤貫主。
今でも残るラムネ冷やし台
夏は引いてきた山水を、さきほどのコンクリート製の水槽にためて、ラムネなどの飲み物の他
トマトや摩耶山で採れたアケビなどを冷やして売っていた。
なんとも風流な「山カフェ」である。
ラムネでのどを潤し、涼しげなヒグラシの声を聞きながら一息ついて見上げれば、
うっそうとした森の中に仁王門がたたずむ。
「さあ、もう一息や」
ここから参詣客は300余段の階段を上り、天上寺を目指した。
8月15日と22日の両日、仁王門下の「上のアメヤ」で数十年ぶりにラムネを売るイベントを
開催します。
当時の古い写真も展示しているので、昭和の参詣客になった気分で摩耶山に涼みにきてください。
「摩耶山ラムネ茶屋〜帰ってきた上のアメヤ」
平成21年8月15日(土)・22日(土)
12:00~16:00
場所:旧摩耶山天上寺仁王門前(摩耶ケーブル虹の駅より徒歩15分)
主催:摩耶ビューラインサポーターズクラブ(仮)
協力:灘百選の会・灘区役所