最近すっかり大バコ居酒屋にいかなくなってしまいました。
なんせ、あのワイワイガヤガヤとした音圧が耐えられない。
酔っぱらうにしたがってヒートアップするグループ客の嬌声。
「ここだけの話やで!…って…ねんて〜!」
「え〜?何て?聞こえへん!」
うるさくて成立しない会話。
心臓に悪い爆笑。
「ドハッハッハッハ〜〜!!」
ユニゾンする爆発音のような笑い声。
傍若無人な拍手。
「では3本締めで!ヨォ〜ッ!」
頼むから、せめて1本締めにしてよ。
すっかり生きる気力を吸い取られてしまうわけです。
もうね。疲れるんですよ。こういう場所。
同じ大バコのうるささでも「心地よいうるささ」というのもあります。
先日大バコとしての使命を終えた六甲道を南に下った「ぐいぐい酒場樫本」は
まさにそういうハコでした。
心地よいざわめきというか、身を委ねていてもそんなにいやじゃない喧騒、
バラバラでありつつグルーブ感のあるノイズ。
そして「許せるうるささ」というのもあります。
六甲道のネイティブ系大バコ「ふくべ」。
八幡線沿いの本店は昭和33年の開店なので六甲道で50年の老舗。
唯一「うるさくてもいい」いや「ずっとうるさくあって欲しい」
と思える大バコです。
逆にここで静かに飲めたら六甲道もいよいよ終わりではないかと思うわけです。
半世紀の「六甲道宴会DNA」が、この空間には凝縮されています。
新歓コンパ、忘年会に新年会、歓送迎会に同窓会。
さまざまな悲喜こもごものドラマが繰り広げられてきた大バコ。
それは六甲道の歴史でもあります。
典型的なふくべ宴会の図です。
いい風景です。
1グループなのに、それぞれがバラバラに盛り上がっています。
なにかこう、画面のそこここに小さな物語がありそうな。
そう、ここは街なのです。
爆笑、嗚咽、沈黙、酩酊
策略、謀略、脱線、沈没
目の前の八幡線は拡幅されようと、ここでは変わらない情景が
繰り広げられています。
「ふくべ」というのは瓢箪の別名だそうです。
瓢箪から飛び出す、まさにめくるめくという表現がぴったりのメニュー群と
心地よい「うるささ」に包まれ、今宵も「永遠の六甲道な」夜が更けていきます。