マツタケを食べた記憶はほとんどないが、
マツタケが赤松に生えるという知識は、きっちりお腹の中に収まっている。
で、赤松町はどうなのかという話。
先に書いておくと、赤松町の赤松はマツタケとは関係ないので、
赤い松の根本をグルグルと探し回っても無駄なのだ。
赤松町の町名は、戦国武将・赤松則村の「赤松城」に由来する。
だが、赤松氏の本拠地は兵庫の西端の上郡あたりらしく、
神戸大学の敷地が「赤松城」の城跡にあたるという噂も、
どうやらツワモノどもの夢の跡ということらしい。
でも、600年ぐらい前に、赤松氏の一族が灘区あたりをウロウロしていたのは間違いないと思うし、
灘クミンが赤松氏の活躍を誇りに思うのは悪いことではないと思う。
そんな戦国ロマンに思いを寄せつつ、「やあやあ、我こそワぁぁぁー」などと、
小声で名乗りを上げながら、神戸大学の工学部に至る急な坂道を上る。
11月とはいえ、額に汗が滲む暑さ・・・。
赤松町1丁目、見晴らしのいいところまで登ってきた。
見晴らしに気を取られがちだが、
ふと振り返ってみるとシャッターにクラシックカーの絵が描いてあるではないか。
このシャッターの向こうにマニア垂涎のオールドカーが眠っているかどうかは分からないけれど、
赤松町は、どこか僕の知らない世界につながる扉がありそうな雰囲気で満ちている。
たとえば、こんな階段の向こうに・・・・。
傾斜地を生き抜く猫たちの目つきも、どことなく別の世界を見つめているような。
急な坂道を少し下りていくと、溝の中を柿がコロコロと転がってきた。
周りを見渡しても、柿の木は見あたらない。
やはり、どこかに抜け穴や隠れた扉があるのだろうか。
赤松町の西の端には、六甲カトリック教会がある。
夕暮れに響く鐘の音は、灘のどこまで響いていくのだろうか。
震災を機にベルギーから贈られたマリア像。
夕闇に響く鐘の音に、優しく耳を傾けているようだった。
戦国ロマンからベルギーまで、赤松町は奥が深い。
次回は「天城通」の予定です。