上野通を西へ、だらだらと上る。
ふと目の前に「光でできたパイプオルガン」の看板が。
何だろう?と、路地の奥に吸い寄せられる。
宮沢賢治は、雲の合間から差し込む太陽の光を「光でできたパイプオルガン」と表現したという。家に帰って調べてみたら、こちらの学習塾もやはり、宮沢賢治の詩の一節から名前を付けたようだということが分かった。
昼下がり、精養軒のオムライスが食べたいな・・・と指をくわえて神戸高校の前を通り過ようとしたとき、ぱっと視界が開ける瞬間があった。
三月。まだ肌寒い風の中で見上げる、青い空。
そういえば高校の卒業式の後、こんな青い空をぼんやり眺めていたっけ。
「卒業して、いったい何解かるというのか〜♪」と、尾崎豊の「卒業」を口ずさんでみたい気分になる。もちろん、近くを通る高校生には聞こえないように。
高校を目の前にすると、なぜか妙に青春っぽい気分に浸ってしまう。
この青空も坂道も、青春のほろ苦い思い出をいっぱい吸い込んでるんだろうなぁ。
上野通の西の果て。8丁目の白い教会。
青い空に、白い壁が映える。
そろそろ桜の季節がやって来る。
待ち遠しかったけれど、もう少し待ってもらいたいような気もする。
今年はまだ、灘の冬を満喫していないのに。