レードルのドアの向こうには「貸店舗」の看板が置かれ、
その上には、無造作ではあるものの、いわくありげにエプロンがかけられていた。
誰かへのメッセージだろうか。
永手町4丁目、JR六甲道駅。
一日25000人以上が、この駅のホームから電車に乗り込む。
駅は人を吸い込み、人を吐き出す。
震災後、駅周辺の再開発は人口の急増をもたらした。
居並ぶ店舗も、群雄割拠、栄枯盛衰、生存競争。
変化のスピードに目が眩む。
人間の顔が見える町になるまで、もう少し時間がかかるのかもしれない。
夕方、駅から吐き出された人びとは、土に染みこむ水のように、
我が家へと帰って行った。