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2009年2月2日(月曜日)

第74話「永手町・前編」

カテゴリー: - aiai @ 11時50分10秒

連れが「オムライスにはケチャップだよね」と言うので、

僕はカウンターに立つマスターに何気なく、本当に何気なく、

「ケチャップのオムライスってないの?」と尋ねた。

一瞥もせず、マスターは「そんなものは、どこでも食えるやろ」と言い捨てた。

翌月、再びレードルを訪れた時、あの、コピー用紙を丸めたようなメニューの中に、

「オムライス(ケチャップ)」の文字を見つけた。

その時僕は、なぜだか救われた気がした。

だがしかし。

そんな出来事の積み重ねが、傾いた喫茶店のマスターに閉店を決意させたのかと思うと、

なんとも自責の念でいっぱいだ。

永手町1丁目、「レードル」閉店の報せを耳にして以来、

あのときの出来事が繰り返し思い出されてならない。

永手町3丁目の蕎麦屋「よう」が閉店した時にも、

やはり、僕の心のざわざわという音は、しばらく鳴りやまなかった。

僕がもっとちゃんと通っていれば、店主のヨーコちゃんの愚痴を聞いてあげれば、

こんなことにならなかったかもしれない、と。

ある日気がついたら、Bar「fine」が無くなっていたときにも、

高架下にあるジャパンのオヤジのメガネが歪んでいても、

最近の六甲道を歩く時は、隙間風のような寂しさと向き合わなければならない。

(次回は永手町・後編)


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