ナダに中心と周縁があるとしたら、篠原台は周縁の空気を色濃く帯びた地域だ。
昭和53年に「篠原台」の名前が付けられたという。
その名の通り篠原の高台に位置しているが、
整然とした住宅地の部分と、混沌とした部分があるように思う。
町名が付けられた昭和53年までに、既にかなり開発が進められていたはずだ。
神戸大の学生が棲んでいそうな「〜館」「〜荘」も、篠原台ではバリバリの現役だ。
他の多くの学生は「大学に上がる」と表現するのに、
この町に暮す学生たちだけは、「大学に下りる」と表現するのだ。
坂の町は、他にもたくさんある。
でも、篠原台の家々からは「斜面地に住む」という強い意志が滲み出ている気がする。
具体的に言えば、表札の出た玄関から果てしなく登る階段。
そもそも、住宅自体が階段状になっているのだけれど。
白い息を吐きながらフゥフゥと坂を登っていたら、雪が舞い始めた。
雪が積もり始めれば、タクシーすらこの町には上がってきてくれない。
炭山橋を渡ったところで、「ここから上は無理」と下ろされてしまう。
決死の覚悟で凍り付いた雪道を登って帰宅した話を聞くことが多い。
周縁では、自然の力が勝ることが多いのかもしれない。