上野通は果てしない。
出発地点の一丁目は、上野中学校の南。
神戸では普通かもしれないけれど、
石垣の上にグランドがあるというのはスゴイことなのだ。
石垣を見ただけでお城をイメージしてしまうのは僕ぐらいかもしれないが、
灘のような斜面都市では、石垣は当たり前の風景。
斜面に大きな土地を用意しようとするほど、
石垣は物々しいものになる。
石垣の高さは、その上にある土地の大きさを知る大事な手がかりになるのだ。
そんな気分で石垣を眺めたりして、
篠原や都賀川あたりの気分で西へ西へ歩く。
ところが、上野通の西端は神戸高校の前を通り過ぎた向こうにある。
行けども行けども、ずっと上り坂。
つまり上野通は、西が高く東が低い。
気圧配置ならば(?)典型的な冬型「西高東低」の上野通だが、
今年は本格的な冬の声を聞かないまま、春の気配が満ちてきた。
そんな上野通で、どうしても気になって気になって仕方がない店が一軒。
「国玉書房」
写真を撮っていたら突然、通りがかりのおばちゃんに声をかけられる。
何かと思ったら、すがるような顔で「郵便局はどこですかねぇ?」と尋ねられた。
「いやぁ、このへん詳しくないんで、わからないですわぁ」
僕の気の抜けた応答は耳に入らないようで、
おばちゃんは交差点を指さして「ここに郵便局があったはずやねん!?」と、
一方的に畳み掛けてくる。
参ったなぁ・・・。
でも、指さす方向にはどう見ても郵便局は見あたらない。
郵便局が頻繁に引っ越しをするわけでもなし、
どこかと勘違いしてるんだろうなぁと思いつつ
「あそこのお店で聞きましょうか」と言うと、
余計に混乱した感じで、
「いや、ほやけどな、あんな、ちゃうねんて」と、必死の形相。
お店の人が出てきたので、僕が代わりに聞こうと近づいてみたら、
なんとその右隣に郵便局がある。灯台下暗し。
「おばちゃん、郵便局ここにありますやん」
「違うねんて、そうじゃなくて、ほんまにこのへんにあってな、でもどこかわかれへんからな、あのな、ここのな」
「いやいや、えーっとね、ほら、そこをよう見てください。そこにあるでしょう。」
おばちゃんはやっと僕が指さす方向を見て、5秒ぐらい凝視する。
やっと郵便局が認識できたらしく、僕の方を振り向くこともなく、
そのまま無言で郵便局に入っていった。
やれやれ。
国玉書房から西にもうちょっと進むと、上野通の五毛温泉。
せっかくなので、裏に回って煙突を愛でることにする。
煙突を根元から見上げるのが好きだ。
根元の逞しさに惚れ惚れする。
「上野通」後編に続く