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2007年1月14日(日曜日)

第10話「岩屋北町」阪神岩屋編

カテゴリー: - aiai @ 07時59分32秒

僕の生まれ故郷の静岡には、わりとローカルな雰囲気の私鉄が走っていた。

でも、地下鉄なんてのはどこにもなかった。

市街部に出れば地下道はあったけれど、
家の近所には「地下」なんてものはどこにも見あたらない。

だからだろうか、地下という言葉に妙に都会でオトナな響きを感じてしまう。

神戸に来て、友だちから「阪神タイガースがファンのために鉄道を走らせているねん」と言われて、
「マジ!タイガースすごい!!」と素直に感動したことがあった。

甲子園球場は大阪の向こうにあると思ってたぐらい無知だったので、
「ボケ」の意味が全然分からなくて、
関西人の友だちを何度も困った顔にさせてしまう日々が続いた。

そんな思い出ばかりの関西デビュー当時、
生まれて初めて阪神電車に乗ったときのことだ。

私鉄というものは、ずっと地上を走るものだとばかり思っていたら突然、
山もないのにトンネルに入った。気が付いたら三宮に着いていた。

吸い込まれるように地下に消えていく阪神電車の線路。

地下を走るのは地下鉄だけだと思っていた僕の頭は混乱して、
阪神に乗ったつもりなのに実は別の電車に乗ったのではないかと考えたりした。

都会では何気ないことでも、僕みたいなオノボリさんにとっては、
地下なのか地上なのか高架なのかという違いは大問題なのだ。

かつての岩屋駅の名残の階段。

阪神岩屋駅あたりに来ると、そんなほろ苦い阪神電車体験を思い出す。

青とクリーム色の阪神電車が滑るように地下に潜り込んだと思ったら、
今度は別の電車が地下から湧き上がってくる。

この駅も改築されて何年も経つけれど、
すっかりトマソン(無用の長物?)化してしまったこの階段を見ると切ない反面、
なぜかニヤニヤしてしまう。

ここが地上と地下の境目だよという思い出の記念碑のようで、
理由もなく楽しい気分になってしまうのだ。

JR灘駅、そして阪神岩屋駅。岩屋北町には二つの駅がある。

僕にとって、これはすごいことなのだ。

岩屋北町。


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