天城通1丁目は、さりげなく阪急の線路に接している。
僕は静岡の生まれだが、石川さゆりの名曲「天城越え」の舞台となった
伊豆のあたりにはほとんど縁がなかった。
歌の中では、隠れ宿の山が燃えてて寝乱れて殺されそうになって・・・、
なんて歌われている天城なわけで、さぞかし物騒な場所なんだなぁ〜などと、
大晦日の度にドキドキしていた頃が懐かしくなった。
だから、阪急の高架トンネルを潜って狭い階段を上がって天城通に辿り着いた時、
僕はついに天城隧道(越えてはいけない一線?)を越えてしまったような
妙な高揚感で胸がいっぱいだった。
少し落ち着くために、ヒンヤリとした晩秋の空気を吸い込む。
意を決して、ひょいと小道を左に入る。
天城通には、天城小道とでも呼びたくなるような、粋な路地が連なる。
「九十九折りぃぃ〜、浄蓮の滝ぃぃ♪」
・・・・路地を歩くときに、大きな声を出してはいけない。
九十九折りの路地を、西に西に彷徨い歩いてゆく。
ふと正面に、「風呂桶栽培」とでも呼べそうな作物を発見。
シュールだが、もしかしたらすごく実用的なのかもしれない。
小道を少し外れてみると、今にも動き出しそうなサボテンの大木が行く手を阻む。
天城通の植物たちは、個性的な雰囲気のものが多い。
西へ西へ歩き、フラフラと吉田酒店の前を通り過ぎる。
ちょっと前に、ここのご主人と静岡の地酒「満寿一」という
酒蔵の話で盛り上がったのを思い出した。
暖かい静岡でいかに美味い酒を造るのか、
こだわり抜いた杜氏さんと一緒に仕込みをやった時の話が印象的だった。
吉田酒店を過ぎてから北に上がり、再び天城小道に戻る。さらに西へ西へ。
浄蓮の滝は見つからなかったけど、何かスピリチュアルなものを感じる大木と出くわす。
天城通は植物の宝庫なのかもしれない。
隠れ宿気分で、まや温泉で一息ついてもいいと思う。
天城通の旅の終わりは、カラフルな美容院のタオルと青い空が出迎えてくれた。
「天城越え」はさておき、個性的な植物が印象的な天城通だった。
次回は泉通の予定です。お楽しみに。