赤黒く染まった柔い玉を
優しくつまんで口に入れる。
貴腐ワインを含んだかのような
香りと甘みが口の中に広がる。
ワインにはない鮮烈さが
さらなる至福を演出する。
「生きててよかった」
自然と口にした言葉は
子どもたちの気持ちも代弁していた。
たかがクサイチゴのもたらした感動は
それほどまでに大きいものだった。
この一週間、毎日イチゴ取りに出かけている。
毎日取っても、次の日にはまた新しい実が
紅く染まってくれているのだ。
肥沃なる灘の大地とイチゴの生命力に感謝。
この時期、多様な生命がその営みを力強く刻んでいる。
ケムシも例外ではない。
って言うか多過ぎ。
美味しいイチゴを手にするには
イチゴのトゲとケムシをうまく避けなければならない。
女の子は特にこのような状況に弱い。
ケムシがいるというだけで近寄ることすらできない。
しかし、イチゴは食べたい。
この葛藤がとても重要なのだと思う。
おそるおそる手を伸ばす。
怖くなってすぐに引っ込める。
またソロソロと伸ばす。
えいやっと掴んでさっと引っ込める。
手の中には(ちょっと潰れてるけど)紅い勲章。
代わりに取ってあげた時の「ありがとう!」の笑顔も捨てがたいが、
自分で取れた時の「やった♪」の笑顔の方が
一層素敵だと思うのであった。
【貴腐ワインとは】
貴腐(きふ)ワインとは「貴腐ブドウ」と呼ばれる腐敗してしまったように見える干しブドウ状態の非常に糖度の高いブドウを使用して造られる高い糖度と濃厚な香りをもつ最高級の白ワインです。貴腐ブドウが造られる上で大きな役目を果たしているのが貴腐菌(ボトリティス・…
Trackback by 貴腐ワイン — 2007年7月31日(火曜日) @ 23時43分08秒