僕の両手には一年生と年長さんの女の子。
女の子たちの手にはお菓子。
あったかい気持ちを抱いてテコテコ歩く。
握り隠すお菓子は三人だけの秘密。
肌寒いお使いの帰り道。
誘拐の途中ではない。断じて。
いつもお世話になっているお二方への贈り物。
一人は九州男児、日本酒をを贈ろう。
もう一人は優しい警察官、ご家族のために甘いものを贈ろう。
そんなお使いに名乗りを上げたのが気持ちが真っ直ぐな二人だった。
まず寄ったのはご近所のあなべる。
ここのパイならきっと喜んでもらえる。
「今日は何のご用事?おつかい、えらいねぇ。」
かつて英語塾の先生をしていた奥さんは
慈愛に満ちた言葉で巧みに子どもの心を掴む。
真っ直ぐな二人は何か手伝いたくて仕方がない。
宅急便の宛名貼りを奥さんに教えてもらい、ぺたり。
ちょうど荷物を取りに来たクロネコさんに手渡しで
「お願いします!」
ご褒美にとハート型のシュプリンガーレを戴いた。
二人の足取りは軽やかになった。
ちょっと足を伸ばして吉田酒店へ。
贈るのはもちろん大黒、しぼりたてをチョイス。
「このお酒?」(一升瓶を抱える園児)
「それをこの箱に入れてね、伝票をここに貼るのよ。」
「知ってるー!」
ゆったりおばあちゃんは元気娘たちの勢いを優しく包む。
少々世間話を楽しんでいると、おばあちゃんは奥から
ラムネを持ってきて握らせてくれた。
二度までもの展開に二人は目を丸くした。
お使いが楽しいのは心と心が交わる瞬間があるから。
生のやりとりを大事にしてくれるお店。
子どもたちに向けられる暖かいまなざし。
未来を担う原石たちを磨いてくれるのは
きらりと光る宝石のような街の皆さんなんだよな。