底抜け!痛快!!船成金の館(71)(03/28 22:56) Page:1
Author : dr-franky
Category: まちなみ・建築

現職代議士に、自分の後を継いで次の衆議院議員選挙の出馬を
要請されるという予想外の展開に、銀次郎は当惑していた。
「次出るのは中井さん、貴方自身ではないのかね」と銀次郎は
質した。

「いや、中央政界の汚さが、私はどうしても許せんのです。」
と、この青年代議士はため息をついた。
 少し前の田中義一政友会総裁への乾新兵衛の資金融資を仲介
したと主張する東京の佐藤繁吉が、300万円の融資成立の報
酬として48万円の支払いを田中陣営に求め、田中、乾の双方
が融資話を否定する、という騒動が巷をにぎわせていた。
 また銀次郎とも近く、神戸に縁の深い内田信也も、政界に転
身していたが、憲政会の加藤総裁に普通選挙制の導入阻止を条
件に「珍品五品」を贈ったという「珍品五品事件」もあり、与
野党ともに利権・金まみれという有様。

 華々しいデビューを飾った中井も憤懣やるかたない、という
風である。
 「中井さん、貴方の気持ちはよくわかるよ。だから私だって
そんな醜い世界はいやなんだ」。銀次郎はやんわりと中井の要
請を断ろうとしていた。
 しかし中井は、「当選が確実なお前が出ないなんて正気の沙
汰じゃない。どうしても出ないというなら当選確実な代わりの
候補者を見つけてこい」と民政党の選挙責任者に厳命にされて
いた。

 その日は引きさがった中井だったが、ある夜、徹夜覚悟で銀
次郎を説得にかかった。さしもの銀次郎も、中井の熱烈なアタ
ックに音を上げる形で、出馬を承諾した。「中井さん、あなた
が選挙参謀をやるという条件付きだ。」というひとことを添え
て・・・。
 しかし神戸の船主たちのグループに「銀次郎出馬の意向」が
伝わるとメンバーから「海運界の代表を送り込むのだ」という
盛り上がりが起こった。結局、銀次郎の元部下の松本博邑と佐
藤国汽船の佐藤国吉が参謀役を買って出た。(この項目つづく)


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