桐の間の東隣は、芳夫人のための「菊の間」である。
桐の間と同じように、菊の間も「菊づくし」な空間が展開する。
まず、襖絵は、当然である。で、欄間も。
芳夫人は、いたく菊がお気に入りなのだろうか。銀次郎は菊で妻の居室を彩ったのだった。
床の間も、例外ではない。釘隠も、引き戸も。正直、やや装飾過剰とも感じられる豪華さが、銀次郎の住まいの「成金趣味」なところなのかも知れない。
ここまで来るとお手洗いを借りたくなるのが人情である。
菊の間の向うに雪隠があるが、その洗面台には焼き物で、シンクは銅製。
ここまで凝った手洗い場というのも、そうそうないと思う。
普通なら、ここまででも十分な規模だが、なんと階段があって二階もあるのだという。青谷御殿の探険は留まるところを知らないがごとく、続くのであった。(この項つづく)