動物園に目的意識を持って訪れることなど滅多になくなった。
なんとなくぽわ〜んと訪れて、ぽわ〜ん動物を眺める。
というのが動物園での一般的な観覧行動であろう。
しかし、しかしである。
当企画「ZOOマニア」では、ナダタマアニマルを見い出し、かつサポートする
という明確な目的がある。
何を基準に選べば良いか?
園内で呆然と立ち尽くす私の脳裏に、王子ZOOでのとある記憶が甦った。
王子動物園写生大会。
そう、小学生の頃は王子ZOOでの写生大会というものがあり
「動物を描く」というノルマが与えられた。
動物をゆっくり見て楽しむ余裕などない。
とにかく「コイツ!」という動物を早急に選び、
そして描かなくてはならない。
毎年私の描く動物は決まっていた。たぶん6年間描き続けたと思う。
それは、カバの茶目子だった。
別にカバが好きなわけでもなく、茶目子が23頭出産の日本記録を
持っているからでもない。
下記のような様々なファクターがからみあいもつれあい、
茶目子が選定されたのだった。
まず写生の鉄則、モデルの動きがのろいこと。
たまにリスザルなど描いている友人もいたが、
正直「アホか」と思った。
そしてフォルム、色調が単純なこと。
たまにクジャクなど描いている友人もいたが、
内心「ダボか」と思った。
そして建物。
オリに入っている動物はオリがじゃまで観察しにくい。
その点カバは柵のみなので見やすい。
獣舎のデザインも重要な要素だ。
カバのフォルムが単純なだけに、背景の建物のデザインが悪いと
なんとも間抜けな構図になってしまう。
カバ舎のミッドセンチュリーなモダンデザインとグラマラスな
茶目子との組み合わせはまさにベストマッチだった。
水面も必要だ。
なんといっても「ドバ〜〜ッ」と塗ってしまえば、画面の半分は完成してしまうのだから。
私は「王子動物園カバ舎の池色」というオリジナル色の開発に成功し、
毎年それを塗ることで、徹底した省力化を図った。
またその配合を友人に教えて、かわりに一燈園の串かつをおごってもらう
という「世渡り」に目覚めた。
作業環境も極めなければならない。
メイン園路からゆるやかに分断されたカバ舎前の通路は、落ち着いて
製作に没頭することができた。大きな木陰は天然のパラソルになり、
水場も近く迅速な筆洗が可能だった。
これらの試行錯誤は作業効率だけでなく作品のクォリティにも反映された。
毎年神戸大丸で開催されていた、兵庫県小中高絵画展で数回の入賞も
果たした。こうして私は「茶目子描きのスペシャリスト(チャメカー)」
としての地位を確立していった・・・・・・・・。
そうだ、写生大会の動物を選ぶ感覚でナダタマアニマルを
スカウトしてみてはどうだろうか?
私は、ゆっくりと園内を歩きだした。
(つづく)
↓バリアフリー化前のカバ舎
naddistプロフィール
灘クミン。神戸市灘区生まれ。地域倒錯型お楽しみ系超ローカルメールマガジンnaddist【灘区冒険手帳】発行人。座右の銘は「視点に延髄切り、記憶にパイルドライバー」。灘を離れるも震災を機に帰灘。「灘愛」を基本原理とするお楽しみ系地下活動セクト[naddism Edit.]設立。
[担当ナダログ]
私を市場に連れテッテ
灘道中膝栗毛