[010710-95]後日談〜あとがきに代えて【さら灘08】
投稿者: Naddist 掲載日: 2001-7-10 (1713 回閲覧)
...n a d d i s t
...010710-95
...
...naddism Edit.
■CONTENTS==================================================
・さらば愛しき灘よ
後日談 〜あとがきに代えて〜
・なだっちゅーの74(読者お便りコーナー)
▼東京パブオフ感想
▼六甲界隈胸キュンスポット
・naddist NEWS(naddistからのお知らせ)
▼DECOと行く、六甲界隈ツアー参加者募集!
▼たくさんの神話を残してクラブ○レ−逝く
▼ナダバッヂお陰さまで売れました
============================================================
愛しき灘を書き綴った、naddist名物連載「さら灘」こと「さらば
愛しき灘よ」は、とうとう本当に本当にこれで最後の最後。
さようならDECOさん。そしていつかウルトラマンみたいに灘に帰っ
て来て下さい。
============================================さらば愛しき灘よ
■後日談 〜あとがきに代えて〜
TEXT:DECO様(元・学遊飲住愛憎喜怒哀楽クミン)
阪神大震災の後、僕は東灘区の本山というところに移り住んだ。
その後また引越をして、今は同じ東灘区の西岡本というところに住
んでいる。結局、東灘には六年以上いることになる。
僕のアパートから灘までは、主要地方道長田・楠・日尾線(別称
・山手幹線、俗称・ヤマカン)という道路一本でつながっている。
車で石屋川を越えるまで、わずかに五分。カサンドラ・ウィルソン
が「テネシー・ワルツ」を歌い終わるかどうかという間に着いてし
まう。かといって車で行ったのではお酒も飲めない。電車で行くと、
当たり前だが電車で帰らなくてはならない。途中で眠ってしまって
松井山手や大垣まで行ってしまっては大変である。だから仕方なく
今日も摂津本山駅前でビールを飲む。すっかり僕も東灘区民だ。今
では灘も東灘も同じくらい好きである。要するに、同じくらいひい
きの飲み屋があるということだ。
さらば、愛しき灘よ―――。本来なら六年前に言うべきだったの
だが、震災後のどさくさの中で、僕は情けないことに自分のことで
精一杯だった。そして灘のまちを出るということさえも意識しない
ままに、引越をした。「別れの挨拶もなしなの」と、灘のまちが僕
を責めてくれればよかったのだが、シャイなのかクールなのか強が
りなのか、「彼女」は僕の一方的な別れに対して表面上は無関心を
装っていた。あるいは僕の引越先がほかならない東灘であることに
腹を立てていたのかもしれない。
クラブ○レーがその長い歴史に幕を閉じた。十年前、僕が極度の
緊張の中で触れた○レーの扉には、「会員制」と書かれたプレート
に代わって「都市計画の為、閉店します。永らくのご愛顧、本当に
ありがとうございました」という貼り紙があった。その達筆の文字
の間からは、六甲のまちを永年見続けてきた店だけが語りうる、深
い物語がにじみ出ていた。2001年、それはクラブ○レー閉店の年と
して多くの人々の記憶に刻まれることだろう。
パット・メセニーは言う。変わり続けることだけがジャズの伝統
である、と。まちの歴史もまた、変わり続けることによってつくら
れる。しかし、変わることは必ずしも過去を切り捨てることではな
い。まちというものは、本来的に、原理的に、好むと好まざるとに
かかわらず、記憶を引きずるものである。だからこそ、僕らはある
まちのことを思い、その記憶の中の場所を、時を、人を、愛するこ
とができる。それを切り捨てることはまちの自己否定であり、僕ら
自身の自己韜晦である。まちの自己否定を「制度」の問題に還元す
る行為は自己欺瞞である。
クラブ○レーは山手幹線の一部に変わろうとしている。今の僕に
道路拡幅の是非を論じるだけの準備はない。けれども、変わること
と切り捨てることを同一視する愚かさは知っている。もちろん、パ
ット・メセニーの音楽が偉大な先達の音の記憶を決して切り捨てる
ことなく変革の道を歩んできたということも。
振り返ってみれば、この陳腐な『さら灘』でさえまちの記憶にほ
かならない。とはいえ、灘というあまりにも巨大な記憶の集合体に
比べれば、僕の記憶など氷山の一角に貼り付いた一粒の微細な氷塊
のようなものだ。でもその氷塊をみつめることによってはじめて、
僕はかつての○レーに出会い、柴橋ビルを思い出し、喫茶店Hの美
人姉妹に胸を熱くすることができる。そうすることによってはじめ
て、僕は死者と向き合うことができるのだ。喫茶Lで知り合った松
田さんの命日が近づくたび、僕は彼を思い出してラーク・マイルド
を吸う。そして毎年のように、またひとつ、松田さんの歳に近づい
たなあ、と思う。
摩耶ケーブルは復活し、居酒屋ふ○べは健在だ。喫茶Lは店舗面
積を大幅に縮小しながらも営業を続けている。新温泉は六甲道灘温
泉として再スタートを切ってすでに久しい。一方、宮前市場は他の
多くの市場同様、再開発ビルへと変わろうとしている。摩耶埠頭が
これからも摩耶埠頭でありつづけるという保証はない。焼鳥道場の
美酒は尽きないなどと、いったい誰に断言できるだろう。過去の記
憶に灘の「いま」が積み重なる。naddistはその録音装置であり、
再生装置なのだ。そんなnaddistに、『さら灘』という記憶をとどめ
ることができたことをうれしく思う。naddistを通じて、まだ見ぬ
あなたと語り合えたことをうれしく思う。これからもたくさんの記
憶が語り継がれることだろう。僕はひそかに待っている。幾多の記
憶の氷塊が空へと還り、やがて無数の雨粒となってこの渇いた世界
に降り注ぐ日のことを。
いつか、あなたとこのまちで出会える日を楽しみにしている。僕
はどこかの居酒屋にいる。声をかけてほしい。「純米吟醸・磯自慢」
を前に、恍惚としている男を見かけたら、それが僕だ。
最後に、今日まで我慢強く連載をつづけてくださったnaddist編集
部の方々に改めてお礼を言いたいと思う。また、文中に登場してい
ただいたかけがえのない友人・知人、ここまで目を通してくださっ
た奇特な読者諸氏、そして灘を愛する全世界のクミンに感謝したい。
2001年7月9日 東灘区西岡本にて
------------------------------------------------------------
DECOさん、最後の最後まで渾身のさら灘、ありがとうございました。
たくさんの素敵な物語楽しく読ませていただきました。
そしてまた是非帰ってきてください。
「まちは記憶の集合体である」私もつくづくそう思います。
naddist発行前に作っていたフリーぺ−パーnaddism(現在休刊中
http://parabolart.com/top/items/naddism/index.html参照)
を見た人から当時こんな事をいわれました「脳の中の風景みたい…」
十数年前、愛しき灘をほっぽりだして「東へと向かう列車」に乗っ
て行ってしまった私が震災後見た灘の町は、惨澹たるものでした。
私にできる事は、記憶を掻き集めて、現実と照らし合わせる事でし
た。私にとってフリーぺ−パーnaddismは灘の町に贈った「木綿の
ハンカチーフ」いや「小泉製麻のドンゴロス」だったのかもしれま
せん。眼前の町が確かなものではない事を痛切に感じたのも、眼前
の町だけが町ではない(はず)と思ったのも、その時でした。
「本当の町」はきっと○○○○の煙突から出ている煙みたいに現実
やら記憶やらがフワフワしてて「なんかの拍子」にきゅっと固まっ
て町になるんだと思います。どうぞ皆さんも地球上(もちろん東灘
区にも!東京にも!ニューヨークにも!モスクワにも!)の地上1m
50cm位にただよう世界一広くて楽しい町「灘ク」を見つけてあげて
下さい。
先週「あっ」という間に「クラブ○レー」が消滅しました。
でも「クラブ○レー」があった「事実」はなくなりません。
今でも地上1m50cm位の所をフワフワ漂ってますよ。きっと。
DECOさんの「さら灘」はこれで終わりですが、読者の皆さんもどし
どしあなたの灘物語をnaddistまでお寄せください。新たな「さら
灘セブン」「さら灘エース」「さら灘タロウ」の誕生を期待してお
ります。
なお、さら灘の最後をしめくくるイベントとして7/20(祝)に
「夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアー」を開催いたし
ます。いってみれば「さら灘ライブ」です。
詳しくは下記「naddist NEWS」をご覧ください。
============================================================
naddistに頂いた、皆さんからのご意見ご感想や灘情報を
ご紹介する「なだっちゅーの!」を、お送りいたします。
メールを下さった皆様、ありがとうございました。
=========================================なだっちゅーの! 74
去る6月30日に行なわれました初の区外イベント「東京パブオフ」
に関するコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
●すけちゃん様(籍クミン・杉並在住)
お忙しい中、開催していただいてありがとうございました。
年に一度ぐらいしか行けない 灘 をたっぷり頂いた気分です。
夏のボーナスもらったみたい。
●たか様(横浜在住)
路上での「カウボーイソノシート」鑑賞も、ちょっぴり恥ずかしか
ったですが楽しかったです。カントリーとヨーデルの絶妙なミクス
チャーに酔いしれました。
東京オフ、次回もぜひ参加したいです。気長に待っていますので、
また開催の折りにはよろしくお願いします。
参加者は5名。横浜、世田谷、杉並、千葉からお集りいただき
ました。4名の方がイベント初参加でした。最近の賑やかなイ
ベントもいいのですが、こじんまりとゆっくり灘話しができて
初期パブオフを彷佛とさせるなかなか味わい深いパブオフとな
りました。そして路上での「カウボーイソノシート鑑賞」。
イケナイものを見てしまったかのような東京の人達の視線が忘
れられません。また是非開催しようと思っています。なんとい
っても灘区内でやるときみたいにイニシャルトークにしなくて
いいのですから!とても楽しかったです。
今回は参加者全員の名前かかせてもらいます。すけちゃん様、
k2g様(ソノシート提供)、kas様、マミヤ様(デジカメ記念
写真提供)、たか様、ありがとうございました。
-----------------------------------------------------nad
[naddist 010610-92]で「六甲界隈青春胸キュンスポット」を募集
したところ、色々と寄せられました。まだまだ募集中ですので、ど
しどしお寄せ下さい。
●UZAK様(2年前からクミン、元立ち寄りクミン)
(夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアーについて)
うー、残念です。毎度タイミング悪く参加することが出来ません。
もうかれこれ12〜3年前、学生の頃の話なんですけれど。
阪急六甲以北、篠原本町・中町辺りだったと記憶しています。
木造平屋建民家で玉突きやを営まれていたお店がありましたがご記
憶のある方おられませんでしょうか?
ビリアード台は2台でしたか・・・、初老のご婦人がオーナーだっ
たと思います。昼間お店に入ると、ご近所さんと思われるこれまた
初老の男性が楽しげに赤い玉と白い玉を突いておられました。
ビリアードをはじめたのがこのお店だったので、ボーリング場やゲ
ームセンターの片隅という騒々しい中で遊ぶのは何かこう、しっく
りとこないのです。もう、このお店は存在しないとは思いますが、
知ってる、とかよく行ってたという方と“懐かしみあいたい”と思
ってました。そこに、この企画。待ってましたのに、抜き差しなら
ぬ都合で参加できません。知ってる人いるかなぁ・・・。
ビリアードって流行りましたね。15〜6年前でしょうか?
灘のビリアードといえば「岩屋ビリアード」は知っているので
すが、さすがにここは知りませんでした。初老のご婦人がオー
ナーの平屋建民家のビリヤード屋で初老の男性が楽しげに赤い
玉と白い玉を突く…とっても物語な感じですね。
このビリアード屋さんをご存知の方情報お待ちしております。
-----------------------------------------------------nad
============================================================
● naddist NEWS ●
============================================================
● 「夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアー」開催!●
今回のツアーは「さらば愛しき灘よ」の作者であるDECOさんを迎え
て「生さら灘」さら灘ゆかりの場所の他、ヌーベル六甲探検など新
旧六甲道阪急六甲界隈を楽しむツアーです。その他ロッコウ界隈幻
の音源『六甲道』『喫茶カウボーイソノシート」も鑑賞いたします。
え、ウソでしょ!?ないはずの○レ−が…。摩訶不思議、なんと過
去の町があなたの目の前で蘇る、naddist特製「灘町歩きスコープ」
も間に合えば用意します。
このツアーを逃しては六甲は語れない…
ツアー初心者、六甲界隈初心者の方もお気軽にご参加下さい。
日時:7月20日(祝)
1400〜1700
集合:1400 阪急六甲駅改札集合(場所変わりました)
まだまだ余裕あります。
ツアーアイテム作成の都合上、参加希望の方は「必ず」naddist
までお知らせ下さい。追って実施要項詳細をお送りいたします。
● たくさんの神話を残してクラブ○レ−逝く ●
先々週末、ヤマカン拡幅工事に伴うクラブ○レ−の撤去工事がしめ
やかに行なわれました。naddistも急遽近隣のクミンと現地調査を
行なってきました。戦後、灘区に米軍キャンプがあり、ヤマカンが
軍機の滑走路として使われていたころからの創業だと聞いておりま
す。また灘の町にぽっかりと穴が開いてしまいました。 合掌
● ナダバッヂお陰さまで売れました ●
号外でもお知らせした通り。去る7/8(日)に稗田サブグランド
で行なわれたフリーマーケットにnaddistはカンバッジ屋を出店し
ました。当日は朝から暑いのなんの、神戸製鋼の溶鉱炉なみの暑さ。
これでは誰も来れまい…と思っていたのですが、ありがたいことに
読者の方が何名か来られました。お陰さまでカンバッジも27個買
っていただきました。ホントに暑い中ご来店いただいた方々、あり
がとうございました。
ナダバッヂ売り上げベスト3
1 ナダスマイル、水道筋CLUB
2 極灘、アイラブNADA、ビワパンダ、ナダイタチ、ガントリーク
レーン、91系統石屋川車庫行き
3 クラブ○レ−、都賀川新橋、92系統石屋川車庫行き
灘中央市場、畑原東市場、六甲猪
============================================================
naddist発行の「磯自慢」は皆様からのメールです。
お気軽に「町話」「感想」お寄せ下さい。
naddistへ、ご意見ご感想、情報メールをお送り頂く時は、
・「なだっちゅーの」(読者お便りコーナー)への転載の可否
・転載の条件(匿名希望、ハンドル名等)
・現在住んでいる所(もしよろしければ)
・灘区との関わり(適当につけて下さい)
(例)元クミン:元灘区在住
現クミン:現灘区在住
(クミン=区民ではないので、他地区の方大歓迎)
等を明記して頂ければ幸いです。
------------------------------------------------------------
naddistはこれからも「なんかの拍子」を探していきます。
------------------------------------------------------------
ご意見ご感想は eken@pp.iij4u.or.jp までお願いします。
------------------------------------------------------------
naddist [Kapsel naddism] 0000009510
produced by "naddism Edit."(@parabolart)
e-mail "eken@pp.iij4u.or.jp"
------------------------------------------------------------
powered by "magmag" www.mag2.com
...010710-95
...
...naddism Edit.
■CONTENTS==================================================
・さらば愛しき灘よ
後日談 〜あとがきに代えて〜
・なだっちゅーの74(読者お便りコーナー)
▼東京パブオフ感想
▼六甲界隈胸キュンスポット
・naddist NEWS(naddistからのお知らせ)
▼DECOと行く、六甲界隈ツアー参加者募集!
▼たくさんの神話を残してクラブ○レ−逝く
▼ナダバッヂお陰さまで売れました
============================================================
愛しき灘を書き綴った、naddist名物連載「さら灘」こと「さらば
愛しき灘よ」は、とうとう本当に本当にこれで最後の最後。
さようならDECOさん。そしていつかウルトラマンみたいに灘に帰っ
て来て下さい。
============================================さらば愛しき灘よ
■後日談 〜あとがきに代えて〜
TEXT:DECO様(元・学遊飲住愛憎喜怒哀楽クミン)
阪神大震災の後、僕は東灘区の本山というところに移り住んだ。
その後また引越をして、今は同じ東灘区の西岡本というところに住
んでいる。結局、東灘には六年以上いることになる。
僕のアパートから灘までは、主要地方道長田・楠・日尾線(別称
・山手幹線、俗称・ヤマカン)という道路一本でつながっている。
車で石屋川を越えるまで、わずかに五分。カサンドラ・ウィルソン
が「テネシー・ワルツ」を歌い終わるかどうかという間に着いてし
まう。かといって車で行ったのではお酒も飲めない。電車で行くと、
当たり前だが電車で帰らなくてはならない。途中で眠ってしまって
松井山手や大垣まで行ってしまっては大変である。だから仕方なく
今日も摂津本山駅前でビールを飲む。すっかり僕も東灘区民だ。今
では灘も東灘も同じくらい好きである。要するに、同じくらいひい
きの飲み屋があるということだ。
さらば、愛しき灘よ―――。本来なら六年前に言うべきだったの
だが、震災後のどさくさの中で、僕は情けないことに自分のことで
精一杯だった。そして灘のまちを出るということさえも意識しない
ままに、引越をした。「別れの挨拶もなしなの」と、灘のまちが僕
を責めてくれればよかったのだが、シャイなのかクールなのか強が
りなのか、「彼女」は僕の一方的な別れに対して表面上は無関心を
装っていた。あるいは僕の引越先がほかならない東灘であることに
腹を立てていたのかもしれない。
クラブ○レーがその長い歴史に幕を閉じた。十年前、僕が極度の
緊張の中で触れた○レーの扉には、「会員制」と書かれたプレート
に代わって「都市計画の為、閉店します。永らくのご愛顧、本当に
ありがとうございました」という貼り紙があった。その達筆の文字
の間からは、六甲のまちを永年見続けてきた店だけが語りうる、深
い物語がにじみ出ていた。2001年、それはクラブ○レー閉店の年と
して多くの人々の記憶に刻まれることだろう。
パット・メセニーは言う。変わり続けることだけがジャズの伝統
である、と。まちの歴史もまた、変わり続けることによってつくら
れる。しかし、変わることは必ずしも過去を切り捨てることではな
い。まちというものは、本来的に、原理的に、好むと好まざるとに
かかわらず、記憶を引きずるものである。だからこそ、僕らはある
まちのことを思い、その記憶の中の場所を、時を、人を、愛するこ
とができる。それを切り捨てることはまちの自己否定であり、僕ら
自身の自己韜晦である。まちの自己否定を「制度」の問題に還元す
る行為は自己欺瞞である。
クラブ○レーは山手幹線の一部に変わろうとしている。今の僕に
道路拡幅の是非を論じるだけの準備はない。けれども、変わること
と切り捨てることを同一視する愚かさは知っている。もちろん、パ
ット・メセニーの音楽が偉大な先達の音の記憶を決して切り捨てる
ことなく変革の道を歩んできたということも。
振り返ってみれば、この陳腐な『さら灘』でさえまちの記憶にほ
かならない。とはいえ、灘というあまりにも巨大な記憶の集合体に
比べれば、僕の記憶など氷山の一角に貼り付いた一粒の微細な氷塊
のようなものだ。でもその氷塊をみつめることによってはじめて、
僕はかつての○レーに出会い、柴橋ビルを思い出し、喫茶店Hの美
人姉妹に胸を熱くすることができる。そうすることによってはじめ
て、僕は死者と向き合うことができるのだ。喫茶Lで知り合った松
田さんの命日が近づくたび、僕は彼を思い出してラーク・マイルド
を吸う。そして毎年のように、またひとつ、松田さんの歳に近づい
たなあ、と思う。
摩耶ケーブルは復活し、居酒屋ふ○べは健在だ。喫茶Lは店舗面
積を大幅に縮小しながらも営業を続けている。新温泉は六甲道灘温
泉として再スタートを切ってすでに久しい。一方、宮前市場は他の
多くの市場同様、再開発ビルへと変わろうとしている。摩耶埠頭が
これからも摩耶埠頭でありつづけるという保証はない。焼鳥道場の
美酒は尽きないなどと、いったい誰に断言できるだろう。過去の記
憶に灘の「いま」が積み重なる。naddistはその録音装置であり、
再生装置なのだ。そんなnaddistに、『さら灘』という記憶をとどめ
ることができたことをうれしく思う。naddistを通じて、まだ見ぬ
あなたと語り合えたことをうれしく思う。これからもたくさんの記
憶が語り継がれることだろう。僕はひそかに待っている。幾多の記
憶の氷塊が空へと還り、やがて無数の雨粒となってこの渇いた世界
に降り注ぐ日のことを。
いつか、あなたとこのまちで出会える日を楽しみにしている。僕
はどこかの居酒屋にいる。声をかけてほしい。「純米吟醸・磯自慢」
を前に、恍惚としている男を見かけたら、それが僕だ。
最後に、今日まで我慢強く連載をつづけてくださったnaddist編集
部の方々に改めてお礼を言いたいと思う。また、文中に登場してい
ただいたかけがえのない友人・知人、ここまで目を通してくださっ
た奇特な読者諸氏、そして灘を愛する全世界のクミンに感謝したい。
2001年7月9日 東灘区西岡本にて
------------------------------------------------------------
DECOさん、最後の最後まで渾身のさら灘、ありがとうございました。
たくさんの素敵な物語楽しく読ませていただきました。
そしてまた是非帰ってきてください。
「まちは記憶の集合体である」私もつくづくそう思います。
naddist発行前に作っていたフリーぺ−パーnaddism(現在休刊中
http://parabolart.com/top/items/naddism/index.html参照)
を見た人から当時こんな事をいわれました「脳の中の風景みたい…」
十数年前、愛しき灘をほっぽりだして「東へと向かう列車」に乗っ
て行ってしまった私が震災後見た灘の町は、惨澹たるものでした。
私にできる事は、記憶を掻き集めて、現実と照らし合わせる事でし
た。私にとってフリーぺ−パーnaddismは灘の町に贈った「木綿の
ハンカチーフ」いや「小泉製麻のドンゴロス」だったのかもしれま
せん。眼前の町が確かなものではない事を痛切に感じたのも、眼前
の町だけが町ではない(はず)と思ったのも、その時でした。
「本当の町」はきっと○○○○の煙突から出ている煙みたいに現実
やら記憶やらがフワフワしてて「なんかの拍子」にきゅっと固まっ
て町になるんだと思います。どうぞ皆さんも地球上(もちろん東灘
区にも!東京にも!ニューヨークにも!モスクワにも!)の地上1m
50cm位にただよう世界一広くて楽しい町「灘ク」を見つけてあげて
下さい。
先週「あっ」という間に「クラブ○レー」が消滅しました。
でも「クラブ○レー」があった「事実」はなくなりません。
今でも地上1m50cm位の所をフワフワ漂ってますよ。きっと。
DECOさんの「さら灘」はこれで終わりですが、読者の皆さんもどし
どしあなたの灘物語をnaddistまでお寄せください。新たな「さら
灘セブン」「さら灘エース」「さら灘タロウ」の誕生を期待してお
ります。
なお、さら灘の最後をしめくくるイベントとして7/20(祝)に
「夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアー」を開催いたし
ます。いってみれば「さら灘ライブ」です。
詳しくは下記「naddist NEWS」をご覧ください。
============================================================
naddistに頂いた、皆さんからのご意見ご感想や灘情報を
ご紹介する「なだっちゅーの!」を、お送りいたします。
メールを下さった皆様、ありがとうございました。
=========================================なだっちゅーの! 74
去る6月30日に行なわれました初の区外イベント「東京パブオフ」
に関するコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
●すけちゃん様(籍クミン・杉並在住)
お忙しい中、開催していただいてありがとうございました。
年に一度ぐらいしか行けない 灘 をたっぷり頂いた気分です。
夏のボーナスもらったみたい。
●たか様(横浜在住)
路上での「カウボーイソノシート」鑑賞も、ちょっぴり恥ずかしか
ったですが楽しかったです。カントリーとヨーデルの絶妙なミクス
チャーに酔いしれました。
東京オフ、次回もぜひ参加したいです。気長に待っていますので、
また開催の折りにはよろしくお願いします。
参加者は5名。横浜、世田谷、杉並、千葉からお集りいただき
ました。4名の方がイベント初参加でした。最近の賑やかなイ
ベントもいいのですが、こじんまりとゆっくり灘話しができて
初期パブオフを彷佛とさせるなかなか味わい深いパブオフとな
りました。そして路上での「カウボーイソノシート鑑賞」。
イケナイものを見てしまったかのような東京の人達の視線が忘
れられません。また是非開催しようと思っています。なんとい
っても灘区内でやるときみたいにイニシャルトークにしなくて
いいのですから!とても楽しかったです。
今回は参加者全員の名前かかせてもらいます。すけちゃん様、
k2g様(ソノシート提供)、kas様、マミヤ様(デジカメ記念
写真提供)、たか様、ありがとうございました。
-----------------------------------------------------nad
[naddist 010610-92]で「六甲界隈青春胸キュンスポット」を募集
したところ、色々と寄せられました。まだまだ募集中ですので、ど
しどしお寄せ下さい。
●UZAK様(2年前からクミン、元立ち寄りクミン)
(夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアーについて)
うー、残念です。毎度タイミング悪く参加することが出来ません。
もうかれこれ12〜3年前、学生の頃の話なんですけれど。
阪急六甲以北、篠原本町・中町辺りだったと記憶しています。
木造平屋建民家で玉突きやを営まれていたお店がありましたがご記
憶のある方おられませんでしょうか?
ビリアード台は2台でしたか・・・、初老のご婦人がオーナーだっ
たと思います。昼間お店に入ると、ご近所さんと思われるこれまた
初老の男性が楽しげに赤い玉と白い玉を突いておられました。
ビリアードをはじめたのがこのお店だったので、ボーリング場やゲ
ームセンターの片隅という騒々しい中で遊ぶのは何かこう、しっく
りとこないのです。もう、このお店は存在しないとは思いますが、
知ってる、とかよく行ってたという方と“懐かしみあいたい”と思
ってました。そこに、この企画。待ってましたのに、抜き差しなら
ぬ都合で参加できません。知ってる人いるかなぁ・・・。
ビリアードって流行りましたね。15〜6年前でしょうか?
灘のビリアードといえば「岩屋ビリアード」は知っているので
すが、さすがにここは知りませんでした。初老のご婦人がオー
ナーの平屋建民家のビリヤード屋で初老の男性が楽しげに赤い
玉と白い玉を突く…とっても物語な感じですね。
このビリアード屋さんをご存知の方情報お待ちしております。
-----------------------------------------------------nad
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● naddist NEWS ●
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● 「夏休みはもう終わり〜DECOと行く六甲青春ツアー」開催!●
今回のツアーは「さらば愛しき灘よ」の作者であるDECOさんを迎え
て「生さら灘」さら灘ゆかりの場所の他、ヌーベル六甲探検など新
旧六甲道阪急六甲界隈を楽しむツアーです。その他ロッコウ界隈幻
の音源『六甲道』『喫茶カウボーイソノシート」も鑑賞いたします。
え、ウソでしょ!?ないはずの○レ−が…。摩訶不思議、なんと過
去の町があなたの目の前で蘇る、naddist特製「灘町歩きスコープ」
も間に合えば用意します。
このツアーを逃しては六甲は語れない…
ツアー初心者、六甲界隈初心者の方もお気軽にご参加下さい。
日時:7月20日(祝)
1400〜1700
集合:1400 阪急六甲駅改札集合(場所変わりました)
まだまだ余裕あります。
ツアーアイテム作成の都合上、参加希望の方は「必ず」naddist
までお知らせ下さい。追って実施要項詳細をお送りいたします。
● たくさんの神話を残してクラブ○レ−逝く ●
先々週末、ヤマカン拡幅工事に伴うクラブ○レ−の撤去工事がしめ
やかに行なわれました。naddistも急遽近隣のクミンと現地調査を
行なってきました。戦後、灘区に米軍キャンプがあり、ヤマカンが
軍機の滑走路として使われていたころからの創業だと聞いておりま
す。また灘の町にぽっかりと穴が開いてしまいました。 合掌
● ナダバッヂお陰さまで売れました ●
号外でもお知らせした通り。去る7/8(日)に稗田サブグランド
で行なわれたフリーマーケットにnaddistはカンバッジ屋を出店し
ました。当日は朝から暑いのなんの、神戸製鋼の溶鉱炉なみの暑さ。
これでは誰も来れまい…と思っていたのですが、ありがたいことに
読者の方が何名か来られました。お陰さまでカンバッジも27個買
っていただきました。ホントに暑い中ご来店いただいた方々、あり
がとうございました。
ナダバッヂ売り上げベスト3
1 ナダスマイル、水道筋CLUB
2 極灘、アイラブNADA、ビワパンダ、ナダイタチ、ガントリーク
レーン、91系統石屋川車庫行き
3 クラブ○レ−、都賀川新橋、92系統石屋川車庫行き
灘中央市場、畑原東市場、六甲猪
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naddist発行の「磯自慢」は皆様からのメールです。
お気軽に「町話」「感想」お寄せ下さい。
naddistへ、ご意見ご感想、情報メールをお送り頂く時は、
・「なだっちゅーの」(読者お便りコーナー)への転載の可否
・転載の条件(匿名希望、ハンドル名等)
・現在住んでいる所(もしよろしければ)
・灘区との関わり(適当につけて下さい)
(例)元クミン:元灘区在住
現クミン:現灘区在住
(クミン=区民ではないので、他地区の方大歓迎)
等を明記して頂ければ幸いです。
------------------------------------------------------------
naddistはこれからも「なんかの拍子」を探していきます。
------------------------------------------------------------
ご意見ご感想は eken@pp.iij4u.or.jp までお願いします。
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naddist [Kapsel naddism] 0000009510
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[010720-96]灘ラーメンは太陽の味【一杯いっとく?04】 |